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Kアリーナプロジェクト 音楽アリーナ/ホテル/オフィス 複合開発プロジェクトの推進力 (株)ケン・コーポレーション 企画部 部長代理 前川 直之 NAOYUKI MAEKAWA 2005年入社 | (株)Kアリーナマネジメント 部長 佐藤 希 NOZOMU SATO 2006年入社

ケン・コーポレーションが、横浜市のみなとみらい21地区に展開する
大規模複合開発「Kアリーナプロジェクト」。
このプロジェクトに携わる2名の社員へのインタビューによって、
事業への着手から現在、そして今後への展望について見ていきます。

Kアリーナプロジェクト

ケン・コーポレーションが、横浜市西区のみなとみらい21地区で推進する大規模複合開発プロジェクト。2万席を誇る世界最大級の音楽に特化したアリーナとなる「Kアリーナ横浜」に加えて、ホテル棟「ヒルトン横浜」、オフィス棟「Kタワー横浜」を併設し、各棟をつなぐ広場を設けることで、さまざまな来訪者を迎え入れる賑わいの場を創出します。

Phase 01 開発 関係者それぞれの想いをバネに、プロジェクトをマネジメントする。(株)ケン・コーポレーション 企画部 部長代理 前川 直之 2005年入社

エンターテイメント施設を核とした
賑わいの創出

横浜市が、みなとみらい21地区の60・61街区において開発事業者の公募をはじめたのは、2017年1月のこと。この公募情報に接し、ケン・コーポレーションとして提案すべきとの社内決定を受けて、まず動き出したのが私たち企画部でした。当時は「ハイアット リージェンシー 那覇 沖縄」などホテルの新規開業が相次いだ時期で、折しも東京オリンピックの開催が決定したことで、インバウンド需要の高まりが見込めることから、開発から運営までをワンストップで行えるという強みを活かして、ホテル開発の提案が妥当との考え方が主流でした。とはいえ、横浜市の事業要件には「観光・エンターテイメントを軸とした街づくりと親和性があり、相乗効果を生むような提案」などの記載がありました。そこで着目したのが、エンターテイメント施設としての音楽特化型のアリーナでした。

当時は、東京オリンピックの開催決定を受けて、競技用の施設建設が進められていました。一方、音楽業界に目を向けると、CDの販売から音楽配信へと切り替わる時期を迎え、リアルな音楽視聴環境としてのライブへのニーズが高まっていました。ただし、大型ホールなどを備えた既存施設の多くがオリンピックに向けて改修を進めていたために、ライブ会場不足はニュースでも取り上げられるほどでした。そこで、世界中からゲストを受け入れる世界最大級の音楽アリーナとインターナショナルブランドのホテル、オフィスを併設する計画とし、エンターテイメント施設を核とした賑わいの創出を目指しました。当社の強みであるインターナショナルブランドのホテルの誘致が他社との差別化につながり、さらに、ホテルとの親和性が高く、多くのゲストを集客できる施設として、音楽に特化したアリーナを選択したのです。

反響も話題性も桁違い、
施設の社会的な意義を実感する

2017年11月、横浜市から事業者決定の通知を受け、本格的にプロジェクトが動き出すことになります。企画部では、提案した計画を基本設計、詳細設計へと落とし込みながら、施工会社を決定し、プロジェクトのチーム体制を整え、コーディネイトしていく役割を担いました。そもそも本プロジェクトは、2万人を収容可能な音楽専用のアリーナを建設するという、ある意味、未知の領域に踏み込むような振り切った計画です。建物の構造も複雑で難易度も高いことから、早期にパートナーとして協働できる施工会社を選定しました。また、ホテルとオフィスの経験はありますが、アリーナの事業性は未知数であったため、グループ企業のシブヤテレビジョンをはじめ、プロモーターやアーティストなど、多くの音楽関係者へのヒアリングを実施しました。さらに、みなとみらい21地区の街づくりについては、横浜市としての強い想いを実現するための、さまざまな条例や規則が定められていました。これらを守りながら、どうしたら前例のない今回の施設計画を実現できるのか、賑わいの創出を可能とするのかについて、横浜市の担当者との協議を重ねました。

「Kアリーナ横浜」は、2023年7月31日に竣工し、9月29日に開業を迎えました。これまで開発に携わってきたホテルなどでも、利用者の声を聞く機会はありましたが、1日に2万人が利用する施設ですから、反響の大きさも話題性のインパクトも桁違い。社会的な意義も強く感じさせる施設だと感じています。個人的に注目してほしいのは、目の前を流れる帷子川を挟んだ対岸のビューですかね。このビューを活かせるような配棟を計画してきたので、ぜひ味わってほしいと思います。実は、新しいライブ体験を提供する施設として、まだ多くの仕掛けや提案が用意されています。そんなポテンシャルが、運営者によってどう引き出されていくのか、それによって周囲が、音楽業界がどう変化していくのかを見守りながら、まだ多くの可能性のある施設であることを伝え続けていきたいと思います。そして、ライブの前後を含めた1日を通しての体験としての、よりスケールの大きなエンターテイメントにしていくというのが、目指すべき姿ではないかと考えています。

Phase 02 運営 前例のない非常識な仕掛けが、新たな常識になる日。(株)Kアリーナマネジメント 部長 佐藤 希 2006年入社

建物というハードに刻まれた仕掛けを、
運営というソフトで支える

入社2年目からグループ会社のシブヤテレビジョンに出向し、エンターテイメント領域における新規事業の企画・運営に携わってきました。Kアリーナプロジェクトには2019年から参加することになります。横浜市の公募に参加し、事業者として決定したことは聞いていましたし、前例のないプロジェクトになると感じていたので、身の引き締まる想いで臨んだことを覚えています。音楽に特化したアリーナとして全客席がステージを向くエンドステージ型とすることなど、基本的なところは決まっていましたが、まだ多くの課題が山積していました。その一つが、舞台や音響、照明などの設備を持つのか持たないのか。持つのならどこまで揃えるかという問題でした。イベントの企画・運営者やアーティストなど、多くの業界関係者にヒアリングを重ね、賛否両論があるなか、最終的に全てを所有することになりました。当時から業界では舞台を設営する人手不足は深刻で、設備を会場が持つことで人や経費を削減できれば、イベント主催者にとって収益化しやすい会場にできるとの判断からでした。

もう一つは、飲食を楽しめるアリーナとすること。ライブ会場では飲食を楽しむ空間が少なかったり、制限するのが一般的でしたが、この常識をいかに塗り替えるかがテーマでした。Kアリーナでは、会場内の各所に売店を配置し、ゆったりと食事を楽しめる空間やバーラウンジ、VIP専用エリアも設けています。このようなホスピタリティエリアを備えることは、カスタマーファーストを常に意識してきたケン・コーポレーションにとっては当然のこと。その想いを運営面から支えていくのが、私たちの役割でした。そして公演の前、公演中や公演後にも、飲食を楽しみ、空間を堪能できるようになれば、そして、そうしたお客様の体験が新たな常識として定着していけば、ミュージックエンターテイメントの世界を、大きく変えることになるかもしれません。業界の慣習や考え方を学び、採り入れるべきところは採り入れる一方で、前例のない取り組みにも勇気を持ってチャレンジすることによってこそ、開かれる道があるのだと思います。

他に類を見ない、
独自の試みが詰まった館の、船出を支える

こうして施設の骨格がある程度見えてきたところで、会場をいくらで貸すのか、いつから予約を受け付けるのかを決めていくことになります。まず、料金体系は、同程度のキャパシティの会場を徹底的に調査した上で、Kアリーナ横浜が持つ他には無いバリューや投資回収という視点も踏まえた設定としました。予約受付を2年ほど前からとするほか、貸出における各種条件やルールを定めました。そして、業界関係者を招いた説明会を開催し、施設の規模や特徴などに加えて、料金体系や予約方法などを公開しました。音楽特化型、2万人規模、完全な民間の運営、飲食を楽しめるラウンジやVIP専用エリアを備えるなど、「Kアリーナ横浜」の特徴を丁寧に説明し、想定以上の反響が得られました。業界平均からすると一見強気の設定となった料金をアナウンスした時には会場が響めいたものの、舞台や音響、照明などの設備が用意されていることで設営時間や経費を削減できる点、そしてこだわり抜いた内装やホスピタリティ空間についてご説明すると、ご理解いただけたようです。この説明会を終えて、いよいよ予約を受け付けることになりましたが、「Kアリーナ横浜」でライブ公演を行う意義を感じて、選んでいただけているという実感がありました。

2023年9月29日、「Kアリーナ横浜」は、開業公演に集った人々であふれていました。アーティストの皆様に満足いただける演奏環境と音質を、主催者・プロモーターの皆様には、会場としてビジネスをしやすい場をご提供し、同時にこうして私たちのアリーナに集うゲストの皆様にとって、かけがえのない感動をご提供するために、この空間を仕上げ、さまざまな仕掛けを用意してきたのだと、この数年を振り返っていました。これまでの常識にとらわれない新たな試みをふんだんに取り入れた施設の運営を通じて、ミュージックエンターテイメントの世界に新たな波を起こせるのではないか。そのために、この会場が持つ価値や提供することのできる時間や体験を、もっともっと積極的に発信していかなければならないと考えるようになりました。そして、このエンターテイメント事業を、ケン・コーポレーショングループの不動産、ホテル、太陽光事業に次ぐ、新たな柱に育てたいと考えています。

※内容はすべて取材当時のものです