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横浜市経済局 ビジネスイノベーション部 企業投資促進担当部長
梶 晃三 氏
株式会社ケン・コーポレーション 横浜支店
部長/支店長 黒岩 弘幸 氏
取材協力:ヒルトン横浜
横浜でも屈指の観光地として知られる【みなとみらい21地区】(以下:みなとみらい)。近年では、都心への良好なアクセスと企業への手厚い支援を用意した「ビジネスの拠点」としてますます注目が高まっています。ここでは、みなとみらいエリアで多数の開発を手掛けるケン・コーポレーションが横浜市経済局をゲストにお迎えし、事業を行ううえでのみなとみらいの特性と、2024年4月に改正された強力なサポート制度「企業立地促進条例」について伺いました。事業拡大とオフィスのコストパフォーマンス向上を求める企業様にぜひお読みいただき、今後の事業環境を検討する際の参考にしていただきたいと思います。
ケン・コーポレーション 黒岩
横浜市経済局
ビジネスイノベーション部は、横浜市の中でも新規ビジネスの参入に重きを置いて活動されているセクションですね。
横浜市経済局 梶
その通りです。経済局は横浜の経済発展を支援していくセクションで、なかでもビジネスイノベーション部はこれから横浜の活力となる新たな産業を行政の立場から支援しています。特に、この「みなとみらい21地区」は重要なエリアです。新規設立だけでなく、事業拡大などで横浜に引っ越してくる企業・団体が増えています。
黒岩 今日はヒルトン横浜にお越しいただいていますが、ここみなとみらいでは、日産自動車、富士フイルムビジネスイノベーション、ヤマハ/ヤマハ発動機も拠点を置いていますね。
梶 はい。みなとみらいは、もともとは三菱重工のドックだった186haの土地を埋め立て開発した街です。観光地として有名ですが、日本有数のビジネス拠点としても育っている。2004年に制定した「企業立地促進条例」を軸として企業誘致を行ってきました。
横浜市に企業を立地する場合、【取得型】と【テナント型】の2種類の支援制度※1があります。
【取得型】建物を建設・取得する場合等に
最大20%/30億円の助成金を交付します
【テナント型】建物を賃借する場合に
最大6年間 法人市民税(法人税割額)の課税を免除します※2
※1対象期間:2024年4月1日から2028年3月31日まで(2024年12月現在の情報です)
※2認定事業計画に係る事業所の税額分のみ
黒岩 企業立地促進条例は、横浜に進出する企業にとって大きなインセンティブとなった制度です。設置されてもう20年あまりが経ちます。どのような経緯で制定となったのでしょうか。
梶 メインの目的は企業立地の促進を図り、市民雇用・市内雇用の増大と市内企業の事業機会の拡大につなげること。それが横浜市経済の活性化に寄与するからです。制定された当時から日産自動車や富士フイルムビジネスイノベーションなどのグローバル企業を誘致させていただきました。
黒岩 制定直後から一気にみなとみらい地区の街区開発が盛り上がりましたね。新宿、渋谷などの都心部へも40分程度で行き来できる場所で、もともと立地としての魅力もあったのではないかと思います。海外へのアクセスも良いです。
梶 ええ。横浜駅から羽田空港へは、東京駅とほぼ変わらない時間で行き来することができます。近年では、国内外からの人・企業・投資を呼び込むためにも重要な制度になっています。
黒岩 2024年には日本サムスンが半導体の次世代パッケージング技術の研究拠点「Advanced Package Lab」を新設することも話題になりました。
梶 人口減少社会が訪れるなかで、海外も含めた雇用創出と生産年齢人口の増加は都市のサステナビリティを実現するための重要なテーマですから。みなとみらいに世界から企業が集まることで市内企業への発注や周辺サービスも活気づき、エンタテインメント需要も取り込めます。
黒岩 加えて、私は滞在の場所としてのポテンシャルも大きいはずだと考えています。みなとみらいは中華街をはじめ遊びの場所としてとても人気がありますが、日帰りで楽しむだけではもったいないと。
梶 古くから横浜は外国人居留地が広がり、海外からの文化をもっとも早く受け入れる場所でした。神戸・大阪と並んで日本のジャズの発祥の地のひとつでもあります。
そうした文化的な歴史を継ぎ、みなとみらいにもエンタテインメント施設やいわゆるラグジュアリーホテルが進出して「途中下車の街」から「滞在の目的地」に変わりつつあるのが現在だと思います。ヒルトン横浜、Kアリーナ横浜、Kタワー横浜がある「ミュージックテラス 60・61街区」は、そのシンボルのひとつだと思いますよ。
黒岩 60・61街区の開発ではいつもサポートをありがとうございます。今後も街区全体の開発を進めて、ミュージアムなどを併設した総合的な経済活動の中心地のひとつに育てていきたいと思います。
梶 ケン・コーポレーションが横浜に進出されたのは、2010年のみなとみらいセンタービル建設からでしたよね。
黒岩 はい。その頃から横浜市には、企業立地促進条例で最大限に支えていただきました。ここからは梶様に、その制度が改正されたというトピックについて伺いたいのです。当社のようなデベロッパーだけでなく、あらゆる企業にとって大きなビジネスチャンスになるアップデートですね。
梶 その通りです。2024年4月に改正されたばかりで、これから多くの企業・団体を支援できると思っています。企業立地促進条例改正のポイントは大きく2つ、ひとつは「テナント企業」の誘致強化。もうひとつは横浜市が立地優位性を有する「研究開発施設」を重点化していることです。
Point 1.
黒岩 テナント企業への支援強化から伺えますでしょうか?
梶 「テナント型支援」については、いままでは建物を賃借し、本社等を設置する場合には「1年あたり1億円」を上限とした法人市民税の軽減を設けていました。今回の改正で、その軽減上限が「撤廃された」という点が、まずは大きなポイントです。
黒岩 大手企業にとっては特にインセンティブが大きくなると。
梶 そうですね。小規模な企業への支援も強化しています。スタートアップなどの成長性の高い企業の立地を促進するため、「従業者数30人以上の企業」のテナント進出が新たに助成の対象となりました。
黒岩 その支援の幅の拡大は、みなとみらいという街の性格を変えそうですね。いままでは大企業の拠点設置や移転が目立ちましたが、今後はより広範囲の企業が横浜に集まりやすくなりそうです。
梶 まさに、それが改正の狙いのひとつでもあります。Kタワー横浜も、小規模~中規模のテナントに対応しているという意味で、みなとみらいでは新しいタイプのビルではないかと思うのですが。
黒岩 おっしゃる通りです。不動産を扱う事業者の視点では、いままでみなとみらいは広い敷地面積をコストパフォーマンスよく持てるという点に最大の強みがありました。自然とテナントビルも1000坪、1500坪という大規模なものがメインになり、小規模な企業はフロアを分割して使用していくケースがほとんどだったと思います。
そのなかでKタワー横浜は200~220坪をワンフロアの基準面積にしています。いまみなとみらいで求められるオフィスビルは何かと考えると、このくらいの規模になるのではないかと。
梶 たしかに、その規模は関内あたりまでいかないとなかなか現れない印象です。スタートアップにも使い勝手がいいですね。
黒岩 関内にはワンフロア100坪ほどのビルが多く集まっています。Kタワー横浜は、そうしたコンパクトなオフィスエリアとみなとみらいの大企業の経済圏をつなぐようなイメージを持っています。
黒岩 そのほかにも「テナント型支援」のポイントはありますか?
梶 ぜひ活用してほしい特例措置がありますよ。みなとみらいは「脱炭素先行地域」に選定され、そこで地域内の様々な企業と連携しながら「公民連携で挑戦する大都市脱炭素化モデル」の構築を目指しています。テナント型支援では、みなとみらい21地域に立地し、再生可能エネルギーを100%活用している企業の課税免除期間を1年延長する特例も新設しました。
Point 2.
黒岩 「研究開発施設」の重点化についてはいかがでしょうか?
梶 さきほどトピックにあがった日本サムスンの研究開発拠点はその最新の例ですが、横浜はもともと研究人材が集まっている土地です。技術者・研究者は約16万人。理工系学部を有する大学は9校。豊富な人的資源にあふれています。
黒岩 みなとみらいでは京セラの研究開発拠点「京セラみなとみらいリサーチセンター」が有名です。2019年の設立だったと思います。
梶 ほかにも「資生堂グローバルイノベーションセンター(S/PARK)」、ソニーグループのカメラ事業の研究拠点 「ソニーシティみなとみらい」、研究開発機能を設置しているシンクロンやレノボ・ジャパン、関西からは村田製作所の「みなとみらいイノベーションセンター」、海外からはLGグループの「LG YOKOHAMA INNOVATION CENTER」など、あげればきりがないほどのR&Dセンター(Research and Development)の集積地です。
今後はその側面をより強め、あらゆる分野のテクノロジー企業を誘致しながら世界に認められるイノベーションの場にしていけたらと考えています。
黒岩 そこに企業立地促進条例の改正でスタートアップ企業への支援拡大なども活用されていくわけですね。
梶 さきほどのテナント支援型の話ともからみますが、「脱炭素」関連には特に手厚い支援を行うよう改正を行っています。
研究所を重点5地域(みなとみらい21地域、関内、新横浜、京浜臨海、臨海南部)に立地し、脱炭素分野に該当するものは、助成率最大20%・上限額30億円。他の政令市でも類を見ない助成率の高さとなっています。
梶 また今回の改正で、取得型とテナント型の助成金の併用が可能になりました。例えばテナントでの入居と合わせて、研究所として使用するための機械装置等の購入や設備工事を行うケースでは、研究所の取得にかかる費用に対する助成金と、テナント型の課税免除の両方の支援が受けられる場合もあります。
黒岩 日本のテクノロジーとビジネスの発展においては、渋谷のビットバレー、筑波研究学園都市、地方では大阪、福岡などが官民まじえて規模もさまざまな開発の場をつくりあげてきました。海外では、ボストンやシリコンバレーなども都市としての特徴がありますよね。みなとみらいは都市としてどのような特徴がありますか。
梶 主には横浜・川崎の「京浜臨海部ライフイノベーション国際戦略総合特区」に沿いますが、従業者の方に住みやすい住環境が整っている「職住近接」で、音楽ホールの立地も相次いで昼も夜も楽しめる街としてワークライフバランスがはかれることも特徴です。第一線のスタートアップや外資系企業など、多様なプレーヤーが暮らしながら働きやすいフィールドが整っています。
黒岩 そのメリットは、テクノロジー系に限らないあらゆる業態・規模の企業にとって大きな魅力ではないでしょうか。みなとみらいの賃料は都心の約半分というコストパフォーマンスです。さらに支援制度が手厚くなっています。
梶 その通りです。企業立地促進条例は研究開発分野に限らず、業種を問わず幅広い企業に利用いただけるものですから。
黒岩 Kタワー横浜としても同じ思いです。みなとみらいへの進出・移転を検討している企業は、何からはじめれば良いのでしょうか?
梶 何はともあれ、まず横浜市経済局にご連絡いただきたいと。どのようなケースであっても利用できる助成金や支援制度があると思います。
企業立地促進条例に限らずたくさんのサポートを活用して、ぜひ横浜市の経済を一緒に盛り上げていただきたいです。もちろんケン・コーポレーションのようなデベロッパー・テナント事業者とも連携しています。
黒岩 ケン・コーポレーションにいただいたお問い合わせからも経済局にお繋ぎいたしますのでご安心ください。
梶 横浜市の発展に尽力してきた私たちの先輩の努力が、世界でもほかにない豊かな街として結実しようとしている。私も一層ひとりの横浜市の職員として気を引き締めて企業をサポートしていかなくてはなりません。何よりもわくわくしています。
ケン・コーポレーションは横浜市と連携しながら、みなとみらいへの企業の進出移転をお手伝いしていきます。お気軽にお問い合わせください。
掲載中の施設名・駅名・社員の所属などの情報は2024年12月現在のものです。